個室にて

Ars Cruenta

自分の痛みを嘆くには

昔、こんなことがあった。とあるところで抗議活動をしている人たちがいて、そこにはそこそこみんなから愛されている一本の木があった。彼らは自分たちが酷い仕打ちを受けているのだとビラを配り、その内容について滔々とマイクで演説をしていた。たまたま通…

過去との向き合い方

昨夜はコロナが始まって以来、初めて盛大に羽目を外した。三軒も梯子したのなんてコロナ以来初めてじゃないだろうか。付き合ってくれたのは同じ会社の元上司。元上司と言っても社内での勤続年数はこちらの方が長く、一年足らずではあるものの一緒にいろいろ…

暗い正義

先日、「アダムズ・ファミリー2」が金曜ロードショーで流れていた。ちょっと忙しかったのだが、2は見たことがなかったということもあって作業をしながらテレビをかけていたのだが、2はもはやウェンズデーの物語が濃密すぎて、ベイビーのことなどぶっちゃ…

怒らせる謝罪

よくキレる人よりも、だいたいのことは笑って済ませてくれる優しい人の方が、本気で怒ったときは怖い。すぐ感情的になる人と違って、いつもニコニコしている人はいろいろなものを押し殺してニコニコしていることが多い。よほど人間に関心がなくてニコニコし…

ナイフの話

ナイフにもごついのから五徳ナイフのような小さいものまでいろいろあるが、やはり一番手になじむのは少し小さめの、柄と刃の長さが1:1で柄がしっかり手に納まるくらいのサイズだと思う。これより小さいと切りものをするのが大変だし、これより大きいと切…

バックステージ

最近、事あるごとに自分のお役目は帳尻合わせと涙をのむことにあるのだなと思う。たとえば自分の尻ぬぐいもできない人の代わりに余計な作業をこなして帳尻合わせをして、「いえいえどうということはないですよ」と言いながらバックステージでポタポタと血の…

「帳尻合わせ」の論理

「Lost Judgment」に登場する、相馬という男が好きだ。別に良い男と言うわけではない。というか、相当ヤバい奴で、平気で人を刺すし、物語中の重要人物も殺してしまう。その正体は半グレのリーダーでもなくもっと別のもので、最終章までキーパーソンになり続…

絵本と涙

昨日、えいやと思い切って広島県の尾道を訪れた。いろいろやりたいことはあったのだが、そのひとつが尾道市立美術館に赴くことだった。あの、黒猫と警備員のバトルで有名な美術館だ。恋人を失って悲嘆に暮れていたということもあり、やや自傷行為気味にすぐ…

おでんを作る

考えてみると、家庭で作る和風の煮物のなかで、おでんほど手のかかる料理はないのではないだろうか。まず、下準備が必要な食材ばかりだ。けんちん汁なら必要ないだろうけどおでんに入れる大降りに切られた大根は下茹でが必要で、卵もまずゆで卵の状態にしな…

物価と洗剤と重量と

キットカットがいつの間にか1枚少なくなり、某有名メーカーのおかきも33枚あったものが30枚になってしまい、企業はモノの値段を上げるか内容量を減らすかで対応を迫られているようだ。そんななかふと気になったのが、洗剤や柔軟剤である。NANOXなどのCMで「…

恋愛結婚願望

結婚願望があるかと突然人から聞かれて、「めちゃくちゃある」と即答するくらいには結婚したいと思っている。「なぜか」と言われると、ひとつは自分がものすごく寂しがりだということを挙げる。普段から会えるような友人が少ないのに寂しがり屋だと、ときど…

食べるスピード

高校生の頃、調理実習で三食丼を作ったときのこと。ささっと作って食べ始めてしばらくすると、隣にいたクラスメートが突然、「そんなに急いで食べなくても」と声をかけてきた。気づけば同じ卓を囲んでいる人はまだ半分程度しか食べ終わっていないのに自分だ…

アクセサリ

子供のころから、何かにつけアクセサリが好きだった。小学生の頃はいつも女の子と遊んでいて、3年生くらいまではビーズが大好きだった。テグスにビーズをつけてネックレスにするのが特に好きだったのだが、ただ細いテグスにビーズを通すのは難しかった。首…

私服の話

大学生の人と一緒に働いていて、その人が案外近くに住んでいたりすると、街中でばったり会うなんてことが一年に一度くらいは起こる。職場だとどうしても「服飾規定」なんてものがあり、たとえば黒いズボンしかダメだとか、華美なアクセサリはダメだとかいろ…

連鎖する夢

調子が悪いときに限って、明晰判明な夢を見てしまう。現実から逃げたいかのように、夢のなかにいる時間が長くなる気がする。もちろん気まぐれな夢のことだから、それぞれのシーンはほぼ独立していて、あまり関係があるようには見えない。一度目が覚めてまた…

冷凍おうち居酒屋

丼ものやめん類は考えないこととして、おかずを作ろうとするとき、基本的に二つのスタイルのうちどちらに合わせるかで献立が決まる。ご飯に合わせるか、お酒に合わせるかだ。もちろんお酒を飲んでご飯を食べることもないわけではないが、そういうときでも、…

月の力

昨夜は十三夜。実はウェザーニュースの通知を見るまで知らなかったのだが、仕事先での休憩中、ふと月が見たくなってうずうずとして、倉庫の窓を開けるとちょうどいい感じの月が出ていた。そういえばしばらく月を見ていなかったとしても、ふと月が見たくなる…

したたかな感情

心のどこかで自分に情愛を感じてくれているだろうと思っていた人に、これまで自分は裏切られたと感じてきた。しかし最近あることをきっかけに、その人はそもそも私にそんな感情を抱いていないということが何となく分かった。その人にさっそく新しい恋人がで…

停電の夜

昨夜、午前1時に急に電気が消えた。マンションから告知されていた施設管理のための停電のことをすっかり忘れていたのである。忘れていたというと少し違うかもしれない。我が家はてっきりその日、一時間ほど断水になると思い込んでいたのだが、その断水の原…

地元トーク

実は今住んでいる町は、長くは住んでいるが友達が近くにいるような街ではない。中学生のころに移り住んできたため小学校の頃の縁はなくなり、中高一貫の学校に通っていてその後、京都の大学に通っていたため、実家周辺には知り合いの家がないようなところだ…

目は口程に物を言うのか

「目は口程に物を言う」という言葉がある。その人の目を見ていれば、その人の考えが喋っているかのように分かることからこういう風に言われるのだろう。でも、目を見てわかることというのは本当にそういうことだろうかと時々疑問に思う。たとえば会議で人の…

大事だけど大事にされないお金

世の中には、大事だと言われているけれども大事にされていないように見えるものがある。その典型例はなんといってもお金じゃないだろうか。たとえば関西の人はお金にシビアだとよく言われる。このような表現は、自分のお金を大事にしている言葉のように聞こ…

書かないといけない状態

しばらく前、「書かなくてよい状態」というタイトルでブログを書いた。要は、自分がブログを書くのは辛く哀しい状態を紛らわせる必要があったからだが、ある種の心の平穏を得たから書かなくてよい状態にまで至ったという話だ。しかし今、自分は再び前と同じ…

自分を変えるかガラスを変えるか

「そんなこと考えたって仕方がないよ」と言ってなんでも行動することが良いのだと言う人がいる。いやしかし、行動というものは考えた結果として出てくるもので、考えることを過小評価することは、無責任で時に破滅的な行動に結びつくのではないかと時折思う…

応援は少なくていい

自分を応援してくれていると思っていた人に裏切られて半年ほどしてからだろうか、不意にインスタグラムのサジェストで出てきた無名のアイドルに何となく興味を持ちフォローしたことがある。今でも何となく何人かはそのまま残しているのだが、彼女たちは毎日…

年の差

いわゆる「アラサー」の自分だが、結婚への焦りだとか仕事に関する要求だとか、そのようなものがあまりない。危機感がないというより、まだ自分が若いような、そんな気持ちが残っている。 いくつか仕事を掛け持ちしているのだが、不思議なもので、ひとつの仕…

面倒をかけることへの負い目

前にブログで書いたこととほぼ重なるが、改めて。小売業で働き始めたとき、慣れないながらも結構ショッキングだったことのひとつに、客は驚くほど自分でものを探す能力がないということがあった。ひどい場合だと店に入ってくるなり「~はどこだ、案内しろ」…

骨を折ること

先日、家族がひょんなことから骨折した。しかも旅行の一日目に。本当に「え、こんなことで?!」ということがきっかけだったので、最初は軽い捻挫だろうと冷やしていたのだが、念のためにと見知らぬ土地で大きな病院に電話をかけるも整形外科は休み、地元の…

兼近さんの言葉

高校時代の自分は、実に不遜で能力もないのに名誉を求める典型的なダメ人間だったように思う。たまたまある出来事をきっかけに勉強ができるようになったから良い大学に入ってそこで更なる幸運に恵まれたものの、幾つかの幸運に恵まれていなければ、きっと今…

関係修復の技術

イギリスで文学者や詩人らが集まるサークルが作られるときには、しばしば「会則」のようなものが設定される。別にこういう会則をたくさん読んでいるわけではないのだが、たまにこういう会則のなかに人を笑い飛ばすルールがあるというのは興味深いと思う。た…