個室にて

Ars Cruenta

年の差

 いわゆる「アラサー」の自分だが、結婚への焦りだとか仕事に関する要求だとか、そのようなものがあまりない。危機感がないというより、まだ自分が若いような、そんな気持ちが残っている。

 いくつか仕事を掛け持ちしているのだが、不思議なもので、ひとつの仕事では10歳くらい年の差があるひとたちに授業をしているのに、またひとつの仕事では同じく10歳くらい年の差がある人たちと一緒に店を切り盛りしている。教師と教え子という関係はいかにも上下関係のように捉えられがちだが、気持ちは同僚に何か仕事のやり方を教えるような気持ちでやっている。店の方も管理者と初心者という関係は上下関係のように見えるが、気持ちは同僚だ。要は、年の差をまるで感じないのである。何かを教えるにせよ指示を出すにせよ、ただ経験や多少の知識があるだけで、年を喰っているだけで相手が何か別物のように見えることがあまりない。10も違えば相手は未成年だが、成人になって時と状況が合えば、一緒に飲みに行くことだってあるかもしれないのだ。実際にコロナ以前はそういう機会がままあったし、今でも5歳ほど年の離れた人と飲みに行ったりもする。そしてもちろん酒の席で、年を理由に相手に気を遣わせることもしないだろう。一緒に楽しく飲めたらそれでいいのだ。

 こういうことを考えていると、そういえば年上については割と年功序列を守っているなと気づく。年下は年の差がそんなに気にならないのに、数歳年上の人にはそれなりの態度で臨んでいるような気がする。相手がそういうことを気にしている人だと想定して、気を張ってしまっているのかもしれない。ただもう何年も付き合いのある人は、10歳以上年が離れていても結構きつめの冗談を言ったりして仲良くさせてもらっている。

 あれこれ書いたものの、10も違えばいろいろ違うだろうが、ある程度大人になったら±5歳は同い年みたいなものだ。お互い余り変な気を遣わず、楽しくやれたらいいのだと思う。