結婚願望があるかと突然人から聞かれて、「めちゃくちゃある」と即答するくらいには結婚したいと思っている。「なぜか」と言われると、ひとつは自分がものすごく寂しがりだということを挙げる。普段から会えるような友人が少ないのに寂しがり屋だと、ときどき家族が死ぬことを考えてしまう。両親は高齢で、猫の寿命はたいてい20年もない。もうすぐ家族がいなくなった時、自分は独りぼっちになってしまう。それまでに何とか、信頼できる新しい家族のきずなを作りたいと考えてしまう。もう一つの理由はもっと積極的なもので、私はあまりアプリや婚活というものを信用していない。あくまでしたい結婚は恋愛結婚だ。結婚しようと思えるくらい信頼できる人と一緒に暮らし続けていく。そういうことに魅力を感じている。
とはいえ実際にいろいろ考えてみると、一緒に暮らし続けることと恋愛の間にはいろいろな溝がある。たとえば、毎日のように「好きだよ」と言って出かけ際にキスをするカップルはいても、結婚してそれを添い遂げるまで続けるような人は滅多に聞かない（というか私は聞いたことがない）。ひと時も離れたくないと口で言うのは簡単だが、今のご時世、共働きが当たり前で、家族になった途端に実はほとんど一緒にいないなんてことにもなりかねない。習慣の違いや習俗の違いも、恋愛をしているときは回避できても結婚したとなっては必ずしも無視できない。恋愛したとしても、結婚するにはいろいろな準備が必要なはずだ。結婚届を形式的に出すのは簡単だろうけど。
そう思うと、自分は恋愛結婚になぜここまでこだわるのかと思うが、結局のところ、相手とどれだけずれていたとしても恋愛して一緒に紡いでいた絆がある程度の差異とそこから生じるわだかまりに光をさしてくれると信じていたのかもしれない。違うし、困るけど、でも私たちやはり一緒だものと言える感覚。どこか弾けたゴム紐が「やっぱり私たち、一緒じゃないと」に戻る感覚。それが全部嘘だったのなら、結婚生活はおろか二人の関係が根本から根こそぎにされてしまうような、そういう感覚。
ちなみに今回の話は一応のオチがあって、私に結婚願望の理由を聞いてきた人はひとしきり私の話を聞いたのち、ばっさり「私は実家で温かいご飯が出てくる生活がいい、家に帰ってた人がいるなんて信じられない」なんて返されてしまった。おお、恋愛結婚の話をしたのに家に帰っているのが「他人」なのかと面喰いつつ、直後に「ヒモになりたい」と話すその人の肝っ玉に思わず笑ってしまったのだった。
