個室にて

Ars Cruenta

生クリームという呪い

 料理をはじめたころ、クリーム系の食べ物を作ろうとするといつも決まって躊躇していた。レシピに必ずと言っていいほど生クリームが入ってくるからだ。これが本格的なソースを使ったレシピならまだ分かるものの、カルボナーラやたらこスパゲティといった身近な食べ物のレシピでも、生クリームが材料に含まれていることが結構ある。そのたびに悩んだものだ。スーパーにわざわざあの給食用牛乳のようなパッケージを買ったものか、もういっそホワイトソースを使うべきかと。

 それから数年たって、結局のところ生クリームが本当に必要な場面なんてのはそんなにない気がしている。というのも、もとはと言えば牛乳の一部だったのだから、クリームにできることはだいたい牛乳でもできるような気がするのだ。たとえばたらこスパゲティで牛乳:生クリーム:醤油が2:2:1の割合になっていたら、牛乳:醤油を4:1で作ってもそこまでひどいことになるわけではない。むしろこっちの方が好みの人もいるんじゃないだろうか。ソースを作るときでも、だいたいはバターと牛乳でしっかり小麦粉を混ぜれば、生クリームを入れずともそれなりに美味しく作ることができる。

 料理初心者として長らく生クリームをどうするかでずっと悩んでいたので、同じような呪いに苦しんでいる人もいるかもしれない。そういう人には、ちょっとした量の生クリームしか必要ではないレシピを作るとき、試しにでいいから牛乳で作ってみてほしい。(いやそれとも、普通の家には生クリームがある物なのか?)