個室にて

Ars Cruenta

おいしい変わり種天ぷら

 年をとって好みが変わったのか、それとも美味しいものに出会ったことで趣味が変わったのか、最近、練り物のほうの天ぷらが大好きになった。海のほうに出かけたら、事前に近くのかまぼこやを調べるほどになっている。そんななか、世の中には玉ねぎ天だとかチーチクとかとは一線を画す、なんとも不思議で美味しい練り物があるのだと知った。今日は幾つかそれを紹介してみたい。

 まずは徳島県の「フィッシュカツ」。フィレオフィッシュの中身のような白身魚のカツを思わせる名前だが、見た目は丸い天ぷらに衣をつけて揚げたような姿をしている。徳島に行ったときは5枚入り400円くらいで売られていたように思う。神戸の阪急百貨店でも2枚入り200円台で別の会社のものが売られていたはずだ。どんな天ぷらを揚げたって味はたいして変わらないだろうと思うのだが、実はほんのりと(いや、結構か?)カレー味がついていて、普通の天ぷらを食べるのとは全く異なる、そのままご飯と一緒に食べたくなるような味わいとなっている。

 ご飯の次はパンだということで、長崎県の「ハトシサンド」。「ハトシ」というのは「エビ」と「トースト」からきているらしく、エビのすり身を薄い食パンで挟んだものを素揚げしている。練り物と食パンが一緒に揚げ物になっているなんてなかなか不思議な感じだが、もともと中国の料理に由来するらしく、そういえば中華料理店で「エビのパン包み揚げ」みたいなメニューを見た覚えもある。ビッグビーンズなどでも販売されており、味は中華味・・・ではなく、しょうゆを奥に感じる優しい味わい。蒸されたエビの甘さにパンの甘さがあいまって独特の美味しさを生み出している。

 最後は最近テレビでも取り上げられていた高知の「大丸」。正式名称が何というのか分からないのだが、とにかくゆで卵がそのまま一つ丸ごと入ったかまぼこのようなものである。大きめのものを買おうとすると1,000円はくだらないので清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったのだが、基本の練り物がおいしいうえにゆで卵も上質で、この二つが絶妙にマッチしている。おでんの具材にウズラ卵を天ぷらでくるんだものが市販されていたりするが、あれが何の細工もなしに切って食えるようになった高級版と捉えたらいいだろうか。

 まだまだ地域によって面白い天ぷらがあるのだろう。そういえば高知では、にんにくの葉が入った天ぷらも非常においしかった。世の中は広い。