個室にて

Ars Cruenta

ガス火で炙るとうまい

 ここ最近の食卓の大きな変化として、Iwataniの「炙りや」という機器を導入したということがある。小さな炉端焼き用の機械で、二本のラインからガス火を出して加熱する道具なのだが、これが思いのほか大活躍しているのだ。

 購入までには長い道のりがあり、実は半年以上悩んでいた。この機械には網焼きモードと焼き鳥モードがあるのだが、焼き鳥を焼きながら網焼きは出来ないとか、この小さな網で家族の腹を賄えるのかとか、そもそもすぐに飽きるのではないかとか。しかしいざ買ってみると(そんな1万円もするようなものでもないし電気屋さんのポイントがたまっていたのだ)、うえのような心配は杞憂だと分かった。そもそも焼き鳥モードは使いこなすのが難しく、網で焼き鳥を焼けばいいという結論に至った。そして炙りながらほかのものを食べていればある程度の大きさがあればいろんなものが焼けるし、ガス火は強力なので割とさっさと焼けること、何でも炙れば結構な頻度で使えるということが分かったのである。

 最初は網焼きと聞いて、焼けるものはあんまり想像がつかなかった。しかしガス火で炙ると、ウインナーでも美味しくなるということが分かった。強い火力でパリッと仕上がるのだ。魚介なら小さなホタテの赤ちゃん、樺太ししゃも、イカの一夜干しなんかを焼いたし、肉も多少なら何でも焼ける。つくねだんごも焼いてみたが、思いのほかきれいに仕上がった。てんぷらや厚揚げを焼いてもいい。さきいかのようなおつまみを炙ってもおいしくなる。要はその時手に入るちょっとしたものが何でも炙れるのである。最近は百貨店の近くを通ることが増えたので、300円くらいで炙れるものがないか売り場をのぞいて帰ることも多くなったような気がする。

 とはいえ課題もある。ひとつはカセットガス自体がそこそこ高いこと。Iwataniの場合3本入りで500円はするから、炙るだけで費用が掛かるという点は見逃せない。ただ、ネット通販などでセット販売しているものを買えば多少は安いだろうし、ポイントもつくだろう。より深刻な問題なのは、脂のある肉を焼くとどうしても煙が出てしまう点。こればかりはなかなかどうにもならない。YouTubeで排煙システムを作っているお宅も見かけたが、システムを片付ける手間を思うとなかなか導入できない。窓を全開にして逃がすしかないのが現状だ。