個室にて

Ars Cruenta

道具の性能

 毎日使うものだからきちんとしたものを、という趣旨の言葉がある。これを言い出すときちんとしなくちゃならないものが無数に出てきてしまうのだが、好きなものには多少はこだわりたい。先日、ずっと使ってきたフライパンにガタがきて、油を入れまくっても卵が綺麗に焼けないほどになってしまった。もう何年も使っていたものだし、思い切って買い替えようという話になった。

 ちょうど毎週、「男子ごはん」という料理番組を見て言うこともあって、番組内で使われている栗原はるみブランドの調理器具が気になっていたところだった。ホームセンターなどでフライパンを買い、トングなども100円ショップやせいぜいニトリで揃えていた我が家からすれば、結構なお値段だったが、番組を見ていていつも使いやすそうだなと思ったため、試しに買ってみた。

 使ってみてまず、熱の入り方の違いがすぐに分かった。前のフライパンと比べて、鍋の底面を熱が伝っている感じが分かる。そして最初だから油の馴染みが良いのはいいにしても、炒め物をするにせよ多少の煮炊きをするにせよ、うまい形の深さがあるので、あおりやすいし煮込みやすい。特にお湯を沸かしたり煮込んだりするときは、少し蓋をしておけば、あっという間に沸く。道具一つでこんなに違うのかと、これ一つで感動してしまった。

 もちろん揃えられるほどのお金なんてないのだが、フライパンやよく使う調理器具はたまには奮発していいものを買ってみてもいいのかもしれない。逆に、あまり使わないだろうけど遊びでやってみたいというときは100円でいいのだ。昔、キッシュを作って見たくてたまらなかったのだが、製菓店などを見ていると型が高いのが悩みの種だった。誰かに「100円ショップに売ってるよ」と教えてもらって、喜び勇んで手に入れた覚えがある。油の塗りが悪かったためか100円ショップの限界か3度ほど作ると型がくっつきやすくなり結局最後は捨てたのだが、遊びで試す分にはとてもいい経験をした覚えがある。