個室にて

Ars Cruenta

生卵の魅力

 美味しい卵があるだけで生活が華やぐ。最近は高級な卵がたくさんあるけれど、我が家では山の方から80個ほどをたまに送ってもらう。普通の卵も高くなってきているので、案外普通の卵+送料+ちょっとくらいの値段で済むのだ。農家さんから直接買うので新鮮、3週間くらいは生卵で食べられる。

 こうやって生卵をコンスタントに食べられる環境になると、生卵の便利さ、特にどんぶりでの活躍には改めて驚かされる。たとえば卵かけごはん。シンプルにご飯に卵、醤油でも美味しいのだが、ここに入れる調味料を変えるだけで色々な味が楽しめる。ナンプラーとか、味噌とか、あるいはラー油を追加するとかで、いろいろアレンジできる。こう書くと当たり前の話なのだが、ご飯にふりかけをかけるのと違って、それぞれの調味料に卵は調味料に合わせた味わいを残してくれるので、ひとつの完結した料理として楽しめるのがいい。

 かま玉うどんも同じように、少しずつ変えて楽しめる。レンチンしたカトキチのさぬきうどんを割いれた卵の上にのせ、あとはもうなんでもよい。醤油でも、そうめんつゆでもおいしいし、かまたまの場合はトッピングを工夫するといいような気がする。シンプルに食べるならネギだが、がっつりいきたければ明太子とかがおすすめだ。汁が残った状態に冷や飯を入れ、再び丼ごとレンチンすれば、即席の和風リゾットみたいになって美味しい。行儀が悪いかもしれないが、カトキチのうどん1玉では足りないって時に便利な食べ方だ。

 温泉卵まで作る時間がないぞってときにも、生卵で大体代用できる。しらす丼にピビンバ、スタミナ丼まで、割と何でも卵を入れるとおいしい。ピビンバは私が唯一ぐちゃぐちゃにまぜて食べる丼だと思うのだが、それ以外の丼なら卵のかかったところ、かかっていないところで味わいの変化を楽しむのもよい。卵は調味料ほど味を激しく変えないので、いわゆる「味変」ではない、どこか自然な移行を楽しめる。

 そして大好きなのがカルボナーラ。卵液を少し湯煎してトロっとした状態にして、大量の粉チーズを溶かし込むのがポイント。いつも同じことを言っている気がする。あいにくそのまま飲んだりする趣味はないのだが、もうちょっと生卵を使えるレパートリーが増えると楽しいのかなと思ったりする。