個室にて

Ars Cruenta

続けるということ

 まったく人には関係のないことだが、もうブログを再開してひと月、きちんと記事を更新し続けている。実は本ブログは毎日せっせと記事を書いているのではなく、少し時間に余裕のある時に数本の下書きを書き溜めて一日一本公開する形式をとっているのだが、それでもこうして続けられているというのは驚くべきことだ。というのも、私は毎年律儀に手帳や日記帳を買っては白紙のまま一年を過ごしてしまうような人間で、こうした継続的に何かをやることがあんまり得意ではないからだ。

 曲がりなりにもブログを続けてみて改めてわかったこともある。「継続は力なり」という諺は、あることを続けることによって何かのスキルが身につくことを物語るものであるが、ここで身につくスキルというのは二種類ある。ひとつはたとえば英語のリスニングや習字のように、継続しなくても一度だけの経験でも経験値となりうるもの。そりゃ続けるに越したことはないだろうが、それは経験値を蓄積していくことでより豊かなスキルが身につくという意味であって、継続そのものに特別な力はない。

 これに対して「継続は力なり」は文字通りに取れば、「続けること」そのものが力になるという意味でも読み取れる。そしてブログを続けるということはこの意味で特別なスキルを磨くことに繋がっているような気がする。

 何か記事を書こうと思えば、ネタが必要となる。それもネタとなることは、職務の一部としてブログをするわけではない以上、自分が携わる仕事に近すぎてもいけない。そうなるとブログで話題とするネタは日々の生活に関わるものにどうしてもなってしまう。自分の生き方を見直し、自分の趣味を見直し、そこに人様の目に触れても有意義でもないが有害でもないものを抽出して言語化していく。そう考えると、ブログの継続は思った以上に、自分の過去と現在のメンテナンスとなっていく。

 昔人から聞いた話だが、ある教授が「一日に一つ、なにか疑問に思うことを見つけなさい」という旨のことをおっしゃったという。この教授の言いは単に疑問を増やしていくとそれを解こうと頑張るという意味に尽きるものではないだろう。疑問に思うことを見つけ続けることで、世界に対する解像度そのものがアップすると考えてのアドバイスではないだろうか。なんでもかんでも続けることは難しいだろうが、続けることの力を信じて三日坊主にならないようにしていきたいものだ。