個室にて

Ars Cruenta

カップ麺と冷凍食品

 最近生活が変わって面白がってカップ麺を食べる機会が増えたが、これまでなら年にせいぜい数回程度しか食べなかった。それもありがたいことに、必要に迫られて食べるというよりも、もっぱら酒を飲んだ後にお出汁のきいたものが食べたいとか、小腹が減ったときくらいしか食べなかったので、カップ麺を食べるときはある種の趣味として楽しんで食べていた。カップ麺がこんな感じなら、冷凍食品はますます食べない。同じめん類で冷凍のいろんな商品があるはずなのに、ほとんど食べたことがない。今日ふとコンビニに立ち寄って陳列棚を見ていると、蒙古タンメン中本の冷凍めんがおいてあり、こんなのいつぶりだろうと思って買ってみた。記憶が正しければ、2年ぶりの加工済み冷凍食品麺である。

 正直そこまで期待していなかったのだが、いい意味で期待を裏切ってくれた。蒙古タンメンカップ麺のものも昔食べた覚えがあるのだが、それとはやはりモノが違う。混ぜ麺を買ったので麺は平打ちなのだが、カップ焼きそばなどでは食べられない食感がある。また、豆腐もしっかり豆腐らしい豆腐で、フリーズドライの具材とは全然異なる。タケノコだろうか、コリっとした食感も相まって、なかなかおいしい。

 思えば冷凍食品とカップ麺はどちらも保存がきくという点ではよく似ている。ただ冷凍食品は冷凍しないといけないから冷凍庫が必要だし、カップ麺に比べて調理がややこしいことが多い。レンジ調理がスタンダードだろうが、そのことは食べられる範囲をグッと狭くしてしまう(一部を除き、たとえば山登りの御供や災害時の拠り所にはならないだろう)。最近は皿なしで食べられるものもあるようだが、そういう製品でなければ、お皿を出す、つまり後で食器を洗う必要も出てくる。そして多くの場合、カップ麺よりも割高である。しかしこうして食べてみて初めて、わざわざ冷凍食品を買うだけのことがある場合もあるのだと得心行った。

 ただカップ麺や冷凍食品のめん類がそれぞれ違う役回りで美味しさを提供しているとなると、お弁当コーナーに鎮座しているカップ入り液体スープのラーメンやうどんの立場はどうなるのだろう、という気がしなくもない。日持ちもしなければ決して安いわけでもないし、冷凍食品ほどではないがそこそこ調理に時間がかかる。保存食の質が良くなるほど、私たちの身の回りにある普通の食べ物は、その真価を問われることになるのかもしれない。