個室にて

Ars Cruenta

冷蔵庫の故障

 昨日、仕事中に「えっ」と軽い悲鳴が出そうになる連絡がきた。家の冷蔵庫の電気がつかないのだという。連絡を受けたとき、真っ先に聞いたのが冷えてはいるかという点だった。幸い「電気」というのは照明のことだったらしく、冷蔵機能自体には問題がないらしい。ドアスイッチがいかれてしまったのか、それともLED電球が切れてしまったのか。いずれにせよ新品を買って3,4年でこうなってしまうと、たいして知らない世代でも、昔の家電はよく持ったものだと思わず言いたくなるし、家電業界の「壊れやすく作っている」系陰謀論もまったく故なきことではないように信じたくなってしまう。なんせ買い替える前のオンボロ冷蔵庫は十数年使い続けて電気一つ切れやしなかったのだから。

 まあそれはさておき、冷蔵庫というのはよくよく考えてみれば、巨大な財産の保管庫である。冷やして使いたいから冷やしているものというのは、飲み物とか一部の野菜など、案外少ない。ほとんどのものはひとたび電気が消えてしまったら、かなりの短時間で溶けたり萎れたりしながら腐敗に向かっていく。

 冷蔵庫の中に数日分の買い物が入っているにせよ、仮に魚が2種類と肉がある状態で停電したなら、急いで料理して食べてしまうのもありかもしれない。しかし冷凍技術の進化とともに一般家庭でも美味しい肉や魚を冷凍で食べられるようになると、冷凍庫のなかには高価な何日分もの、あるいは何十日分もの食事の材料を詰め込むことが可能となる。たとえばコストコで10回は使えるであろう巨大なシーフードミックスや、とかしてステーキに使うための肉、ピザなどを買って凍らせている家も多いのではないだろうか。また、最近はネットオークションなどで安価に高品質の商品を冷凍輸送してもらえるケースも多い。冷凍の馬刺しや鳥のたたきにもよくお世話になっている。そういう家にとっては、冷蔵庫がひとたび壊れてしまうと何万円単位で棒に振ってしまうのだろう。そう考えると冷蔵庫は20万円しても、そのなかにはそれなりに値打ちのある宝物をしまっておけることになる。慎重に買わねばならないものであることには間違いないが、ストックをする人にとってはお金を出してもよいところなのかしらんと思う。