個室にて

Ars Cruenta

メンとメシ

 今日、「秘密のケンミンショー極」の初回が放送されていて、田中さんはいろいろ愛されているなあと思っていた中、ひとつ気になったことがある。大阪の食文化を紹介するコーナーで、「焼きそば定食」が取り上げられたことである。

 番組では焼きそばと一緒に飯を食らう大阪府民がどこか珍妙なもののように描かれていて、スタジオでは「沖縄では沖縄そばにトーストを添える店が一軒ある」とか、「名古屋で生きていると白米に合わせるのは味噌煮込みうどんだけだ」など、様々な意見が寄せられていた。

 しかしこの話、こういう切り口でいいのか。それが抱いた疑問である。たとえば沖縄そば屋さんで白米が出てこなくとも、ジューシーという炊き込みご飯の一種をセットにしているお店はたくさんある。また、東京だってうどんに何か丼を添えるならいくらでもそういうお店はあるだろう。中華料理店だって、ラーメンや焼きそばとチャーハンのセットをおいている店がある。焼きそば定食というものは、こうした「メンを食ってメシも食いたい」という消費者の欲望の一つの表れなのではないだろうか。

 そもそも麺料理は腹持ちが悪いといわれている。そこにおにぎりやご飯を足すことで昼以降も頑張ろうとなったことは自分の経験からも想像がつく。そこで選ばれるメンにスープの役割も果たすうどんやラーメンが選ばれるのは一番シンプルなケースだろう。しかし焼きそば定食は味噌汁がついていることが多い。こう考えると、「焼きそばをおかずに飯を食う」という感覚よりも本当は、「焼きそばと味噌汁をおかずにご飯を食べる」というのが正しいのではないかと勝手に思ったりする。家庭の場合は分からないが。

 焼きそば定食の肩を持つような言い方をしてきたが、実は一番好きなのは焼きそば定食ではなく、メンとメシが融合したソバメシだったりする。メンをすすりあげる快感はズタズタに壊されるものの、ときどき無性に食べたくなる。最後に目玉焼きを載せて少しずつ崩しながら食べるのが何とも言えず心地よい。