個室にて

Ars Cruenta

「リニューアル」に求めていたこと

 長きにわたって工事が続いていた梅田の阪神百貨店がいよいよリニューアルしてグランドオープン、「食の阪神」をウリにするため敷地面積の4割だったかを食品関連のフロアにするという大規模な改造を行った!・・・といえば聞こえはすごくいいのだが、一介の客としては何がそこまでお祭り騒ぎの「リニューアル」なのか、早くもついていけずにいる。

 確かに新規の出店などは多いのだろう。神戸のお肉屋さんが生鮮フロアに出店していたり、最近はやりのピスタチオに特化したスイーツ店、あるいは茶屋町の方で居酒屋をしていたビヤホイがベトナム系惣菜を売り出すなど(ちなみにビヤホイがいい店だとは思わないのだが)、いろいろ新しいものがあるのは確かだ。思えば少し前にリニューアルしたときはパン祭りと言わんばかりにパンばかり扱っていた1Fも、今では少し小さめの催し場が幅を利かせ、TWGなど紅茶やお茶を売るお店が三店舗ほど出てきた。昔の阪神と比べると、ほかにもいろいろ変わっていることはあるのだろう。

 ただこうした変化というのは、たまに店を訪れる程度の人間の身からするとそこまで劇的な印象の変化をもたらすような変化ではないのではないか。たとえばデパ地下で関西初出店のお店が何軒出たところで、実際に購入するのは数店舗、金額もほとんどの人は限られる。よほど何かが来るのを楽しみにしていた人でもない限り、実際の消費は季節によって各店が異なる商品を出して消費を喚起するときのように、「こんなものができている、今度はこれを買ってみよう」といういつも通りの光景に収斂していくのではないか、などと考えてしまうのである。

 じゃあ自分はどうしてリニューアルしてすぐに阪神百貨店に行ったんだろう。たまたま用事があった帰りだから、というのが一つの簡単な答えだが、結局のところ思いつくのは、「久々にフルレングスの阪神が見たかった」と言うことに尽きるのではないか。何もかもはないが、なじみの店があり、だいたい一通りのものがある百貨店。その姿をリニューアルに込めて拝みたかっただけなのではないか。そんな気がするのである。