個室にて

Ars Cruenta

ファッション

 いつも大きな商業施設に入ると、服屋の多さに戸惑う。考えてみれば百貨店のほとんどのフロアはファッション関係だし、梅田にある多くの商業施設はその半数以上が服飾店で構成されているんじゃないだろうかと思えるくらいだ。それほど服にこだわりがないのだから、そりゃ梅田に行っても行くところがないわけだ。先日も久々にHEP FIVEでも覗いてみようかと中に入ったものの、服飾店ばかり軒を連ねているのと若者が多すぎるのとで、すぐぐったりして出ていった覚えがある。

 「服飾」といっても十人十色で、きっといろいろの人の趣味に合うような様々な服飾店があるのだと思うが、ブランドのショップでもない限り、素人目には似たり寄ったりのお店が多いように見える。たとえば気合の入ったゴスロリ系とか渋い甚兵衛を専門に扱うお店なんかがテナントに入っているケースはあまり見たことがない。もちろんシックな服飾屋さんとTシャツ専門店ではそれなりの違いがあるのだろうが、どこもそこまで尖らなくて、少し特徴のある物を置きながら万人受け(?)するものをみんなが扱っているような印象を受ける。

 その結果といっていいのか、何かが欲しいというようなときにしばしば痒い所に手が届かない。以前、古くなった帽子をかえようと帽子を買いに行った。事前に幾つかショップをあてにして行ったのだが、どこもハットは同じようなものしか置いておらず、いまいち趣味に合うものがなかった。かといって、たとえば百貨店の帽子屋で見繕うほど予算があるわけでもなく、結局家に帰って自分がかぶっていた帽子のブランドをネットで探して注文するのが一番簡単だと気づいた。もちろんその人の欲しいものによっては痒い所に手が届くケースというのもたくさんあるのだろうが、文字通り「ファッション」にあまり流されず何かに特化したお店が増えれば、もっと町は楽しくなるんじゃないかという気がする。・・・もちろん、それで経済的にうまくいかないから今の街の風景ができたのかもしれないのだが。