個室にて

Ars Cruenta

りんごのチョコレート

 神戸にはいろいろ美味しいスイーツがあるが、お気に入りなのが「りんごのチョコレート」、正式名称「ポーム・ダムール」、神戸一番館の商品である。りんごを調理したものをチョコレートでくるんだ一品で、おやつというよりかはウイスキーといっしょにいただきたくなるような味だ。現在は大阪だと梅田の阪神百貨店など、全国あちこちで購入することができるが、一番館自体はもともと今から約半世紀前、神戸元町の小さなお店から始まっている。しかももとからチョコレートを作っていたわけではなく、最初は1971年にチョコレートの輸入販売を始めて、その二年後にこのポーム・ダムールが開発されたという経緯がある。今も創業の地、元町時計店ビルの3階に本店があるのだが、これだけショップを抱えているお店とは思えないほど本店はこじんまりとしており、百貨店では買えない限定品などが多く取り扱いされている。現在は2階に「あじさい」という喫茶も営まれており、多くの人が立ち寄っている。

 りんごのチョコレート、ポーム・ダムールだが、実はいろいろ種類がある。スタンダードのものに加え、たとえばヨーグルトチョコでくるんだ「ヨーグルト味」、紅茶のテイストをまとわせた「紅茶味」、ルビーチョコレートでくるんだものまである。そんな中でも特におすすめなのが秋から冬にかけて売り出される「ブランデー」。ボイルしたりんごをブランデー漬けにしてビターチョコでくるんだもので、普通のポーム・ダムールよりもこちらのほうが好みだ。実はチョコレートでくるまれるのはりんごだけではない。「神戸夢風船物語」はオレンジをチョコでくるんだもので、このほかにもいちじくチョコ、梨チョコなど、時期に応じてほかのフルーツをチョコでくるんだ商品も売られており、どれもそれぞれの素材が活かされていて非常においしい。

 チョコレート屋さんから始まった一番館だが、チョコレート以外のお菓子も取り扱っている。クッキーやフルーツゼリー、パウンドケーキなどである。クッキーは百貨店で扱いがあった気がするが、パウンドケーキなどは少なくとも阪神梅田では手に入らない。ほかにおいしいパウンドケーキ屋さんはいろいろあるだろうが、1,200円くらいで多彩なフルーツがのったパウンドケーキ一本が買えるのはかなりリーズナブルではないだろうか。本店に立ち寄ったときはちょうどハロウィン間近で、パンプキンケーキが売られていた。一番館の隠れた一品を楽しむのもいいかもしれない。