個室にて

Ars Cruenta

一人前のカレー

 前々から、時折脳裏をかすめては、料理をしているうちに気にならなくなって、たいして調べもせず済ませてしまっていることがある。それは、「一人前のカレーにはどれくらいの重さのルーが入っているものなのか」ということである。というのも、家でカレーを作るとき、我が家はカレールーひと箱を使ってカレーを作る。カレールー半分で5~6人前といわれているから、カレーは10~12人前できるはずである。しかし不思議なことに、そこまで大食漢でもない大人三人が食べると、もう残りは出汁と醬油を足してカレーうどんにするくらいにしか残っていないのだ。つまり実際に皿に盛ってみたところ、カレーは10人前どころか、5~6人前くらいしかないことになる。

 はてさて水加減が悪いのかしらんというと、別にそうというわけでもない。具材が少ないのかというと、むしろ我が家では大量の野菜と肉を使っており、15人前できていてもおかしくないくらいである。どこで何が狂ったのか・・・そう考えているうちに、ふとレトルトカレーのことに思いが至った。レトルトカレーは大した量もないのに一人前をうたっているじゃないかと。カレールーのレシピに書かれているのはこの量を基準にしているのではないか・・・ちょっと考えてみよう。

(1)レトルトカレー

 レトルトカレーの量については、幾つかのメーカーを比較しているサイトがあるので、これを参考にしてみよう。

kurawaka.com

これによると、150g~200gとばらつきはあるものの、一人前はだいたい180gと考えてよさそうだ。これに対し、大盛りを称する商品を調べると250g~300g程度となる。180gを基準と考えると、だいたいこれの1.5倍弱/強と、そこそこ多めに入っていることになる。

(2)おうちのカレー

 家で作るカレーがどれくらいの量できるものなのかは、鍋の大きさや火加減の違いで相当変わってくるだろう。ただ、たとえばハウス食品の「バーモンドカレー」では、12皿分の材料が次のようになっている。

バーモンドカレー 230g

肉 500g

玉ねぎ 800g

じゃがいも 450g

にんじん 200g

水 1,400mL(鍋に蓋をする場合は1,250mL)

ここでは水分の蒸発について考えることをやめたいから、ストウブのような蒸気の漏れない鍋で蓋をしっかり閉めて作る場合を考えよう。以上の具材をすべて足せば12皿分で3,430g、炒める際の水分蒸発量を100gと考えて3,330g。一人前は単純に割って275gということになる。

 もうひとつ、S&Bの「ゴールデンカレー」で同じように考えてみよう。ルー半分で5~6人前だから、全部使って11人前と仮定して、材料は次のようになる。

ゴールデンカレー 198g(200gと考える)

肉 500g

玉ねぎ 600g

じゃがいも 300g

にんじん 200g

水 1,400mL

バーモンドカレーの場合、蓋をしない場合はふたをそもそもしないのだが、ゴールデンカレーのレシピでは蓋をしっかりしめず少しだけ蒸気が出るようにして作るとある。そこで、適当だが水は100mL程度蒸発したことにして、1,300mLとして計算しよう。全部足して3,100g、炒めの際の水分蒸発を同じように100gと考えて3,000g。一人前は270gとなる。バーモンドカレーよりも玉ねぎやじゃがいもは少ないが、だいたい同じくらいの分量で考えられていることになる。

 いずれの場合も、水分蒸発量を少なく見積もっている可能性はあるものの水分蒸発量を300gとしても一人前は20g程度しか減らないわけだから、レトルトのカレーと比べると一人前の量はレトルトの「大盛」程度に作られていることになる。しかし子供のころ、レトルトカレーを食べてもおなかいっぱいにはならなかった経験を踏まえると、この250~270gは多めと言えるのか。結局、我が家はそれなりによく食う家だったという結論になるかもしれない。

(3)お店のカレー

 ちなみに有名なココイチで調べてみると、Yahoo知恵袋のページの幾つかで、だいたいポークカレーの普通盛ルーが220g(210gと書いている人もいる)とあった。あのあまり何も入っていないルーでそれだけの量なら、家のカレーのように少しでも具材を入れればもう少し多めの量になるだろう。トッピングあってこその一人前と言えるかもしれない。