個室にて

Ars Cruenta

フレッシュ

 学生時代、近所のお店で働きだしたとき、私はいつも何かをひとに尋ねていたし、最初の数か月はずっと震えていた覚えがある。個人的な家庭教師や短期の肉体労働、実験の被験者などはつとめたことがあったものの、大きな会社の一員として定期的に働くのは初めてで、こと会社はマニュアルというものを大事にするものだから、どこまでがマニュアルの範囲でどこまで自分はやっていいのかを常に気にしながら生きていた気がする。半年もすればある程度慣れたものの、今から振り返ってみても、いろいろ手のかかるバイトだった自覚はある。

 最近、職場に大学に入ったばかりのバイトが2人ほど入り、ふと自分が曲がりなりにやっていた時のことを思い出した。いろいろ分からないだろうし、戸惑うことも多いだろうけど、見ているだけで一生懸命やろうとしてくれているというのは思った以上に肌感覚として伝わるものなんだなと思った。どんな仕事にせよその人の人生の履歴となる経験なのだから、お互い、やってて楽しかったと思ってほしいし、身に着けられるものは身に着けてほしいなと思う。

 それだけ。