個室にて

Ars Cruenta

心の栄養

 よくツイッターなんかで、心の具合が良くないときはパーッとお金を使ってほしいものを買ったり美味しいものを食べたりすればよいという話を見かける。しかしよくよく考えてみると、それである程度自分の心を整えられる人というのは、すでにそういうルーチンをこなしてそういう整え方に慣れている人でないといけない。5万円をパーっと使うことそれ自体にストレスを覚えるくらいだと、買い物したことでかえって心が追い込まれることだってあるのだ。

 第一、心の具合が良くないと言ってもいろいろあって、そのなかにはやはり買い物や食事では埋まらない「心の栄養」が必要な時というのがあるのではないか、という直感は残る。体調が悪いときに自分に何の栄養が足りていないかを無条件に知ることは出来ない。ただ多少の知識があれば、たとえばにきびが急に増えたことからビタミンB2B6あたり、色の濃い野菜が不足していると推測することは出来る。同じように心がしんどい時に何が不足しているかは、経験と知識からある程度推測され、まさに自分に何らかの精神的満足が期待できない欠乏を自覚しているからこそどうしようもなくしんどくなるということもあるのだ。

 およそ今は逆立ちをしても手に入らない満足を嘆いてもしょうがないように、代替物を求めてもしょうがない。たとえば人のぬくもりを感じにパブに入ることは、パブで自分が一人きりであることを痛感することで終わる。