個室にて

Ars Cruenta

浦島太郎

 コロナでなんでもかんでもリモート・メール・郵送となるなか、先日、本当に久々に京都を訪れた。本当は何度か行かなくちゃならないタイミングがあったのだが、コロナとは別のやんごとなき事情のためかなわなかった。

 地価の高いであろう大通り沿いというのは不思議なもので、半年くらいあけて訪れると中途半端に浦島太郎になったような気がしてくる。というのも、半年前から変わらずその場にあるものの一方で、「え、これが変わったのか」と思うような施設が入れ替わっていたりするからだ。当たり前と言えば当たり前のことなのだが、単に入れ替わった以上の衝撃が走ることも多い。京大のすぐ近くにある「百万遍」の交差点を通りがかって大変驚いたのが、北東にあったはずのお好み焼きやたこ焼きのお店が、いつの間にかピザ屋さんになっていたことだった。まだできたばかりのお店だったが、コロナの影響でつぶれてしまったのだろうか。それから南を見てさらに驚いたのが、ずっと通りがかるときにはそこにあったはずのダイコクドラッグが建物全体を覆われ、今春からドラッグユタカになるという衝撃的な絵だった。

 京大の北門がある南西の角はかつて「タテカン」があった。この光景を覚えている京都の人はまだ多いだろう。私が初めてこの交差点を通った時、今餃子の王将などがある場所には「レブン書房」だったか、一軒の古本屋がまだ存在していた。その名残から、しばらくその王将は「レブン王将」という愛称で呼ばれていたのだった。この愛称は、今の人も御存じなのだろうか。

 御堂筋線一駅分の移動でお金を使うのは癪なので、阪神梅田から京阪淀屋橋までは地上を歩いていく。すると御堂筋沿いを通るのが一番早いということになるのだが、この道には最近毎日のようにテレビで流れているかの有名な無料PCR検査場となっている。今夏にもすでにここは検査場だったし、もっと前からだったかもしれないが、そういえばここにはもともと何があったのだろう。テレビでもちきりの検査場のすぐ近くには大きなカラオケ館があったが、今日見るとその明かりは落ちていた。ここはこれから何になるのだろう。そしてそれに自分はドラッグユタカほどの衝撃を受けるのだろうか。そんなことを思いながら、帰路についたのだった。