個室にて

Ars Cruenta

舌っ足らず

 よく酔っているのと間違えられるし、実際に酔っぱらうと余計にひどくなるのだが、子供のころからどこか舌っ足らずなところがあって、舌がもつれてうまく話せないことが意外とコンプレックスになっている。たとえば日本語で「ロード」と「道路」がきちんと言えなかったり、「さしすせそ」の音が上手に言えず、空気が抜けるような音が出てしまうことが多い。「しゃ」くらいに相手には聞こえているのかもしれない。

 吃音ではないと思うのだが、一度言い間違ってしまうと、それを言い直そうと慌ててしまってまた同じように間違った言い方をしてしまったりすることもよくある。逆に、フリーズしてそこで発話がとまってしまうこともある。温かく見てくれる人の前ならいいが、たとえば仕事場なんかだと、意外と冷たい目線が飛んでくることもあり、なかなかどうにもならない。

 母語でさえこんな具合なのだから、英語の発音もフランス語の発音も恐ろしく苦手だった。唯一発音で幸いしたのは、巻き舌ができたためロシア語でそれっぽく発音できたくらいか? まあもっとも発音というのは練習で改善される部分がかなりあるので、自分の生まれつきの習性を理由にさぼってきたというのも大きいだろう。ただ、クイーンズイングリッシュを喋れずとも半月英国で過ごすことだってできたのだし、日本でも普通に生活はしているつもりなのだから、気長に構えて少しずつ直せるところを直していければいいのだろう。