個室にて

Ars Cruenta

久々に知り合いと会うとき

 新生活の前に会える人には会っておこうと、この二か月ほどで何人もの人と会った。ストーカー被害に遭った影響の余波で去年度はろくすっぽ人と会えなかったのだが、それにしてもすごい頻度でいろんな人と会ってお話をした。そのなかには、6年も会っていない人がいたのだが、そんなに時間がたっているか不思議なくらい、みんな「変わっていない」のだ。

 もちろんいろいろ変わっていることはある。髪型が変わっていたり少し背が伸びていたり、残念ながらちょっとやつれ気味だったり、いろいろだ。私だって、この数年のうちにいろんな変化はあったかもしれない。しかし向こうもこっちも芯のところが変わっていない気がするのだ。服飾の趣味もそんなすぐに変わるようなものではないし、話し方や考えていること、行動原理といったものも昔と大して違いがない。「相変わらずですね」と言われるのはこの場合、お互い悪いことじゃない。再び会うまでの時間は、その人がその生き方で曲がりなりにもやってきたことを証明してくれる。こと学生以来あっていない人の場合。

 昔、自分がなかなか変われないことを愚痴っていたら、バーのマスターに「人間は自分が今思っているところから10%も変われない」とたしなめられたことがあった。そのときは痛いこと言うなあと思って聞いていたものの、むしろ人間が10%も変わったら大変なことなのだ。自分がこれまで築いてきたものをぶち壊しにでもしない限り、人はその人のやってきたように生きていくしかない、ということなのかもしれない。

 そういえば、私の身の回りにはいないが、これとは対照的に変わり続けることそれ自体がスタイルのようになってしまっている人もいるのかもしれない。昔冗談のように聞いたのは、会うたびに彼氏が変わっている女の子の話だったり、人に影響されてどんどん服飾の趣味が変わる人だったり。そういう人は、自分がどんどん変わっていくことそれ自体を楽しんでいるのだろうか。それともやむにやまれずその場その場の流れに巻き込まれるように生きているのだろうか。