個室にて

Ars Cruenta

平日夕方のサイゼリヤ

 たまに夕方から飲みたくなるとき、ふらりと近くの駅前にあるサイゼリヤを訪れる。デカンタに前菜数品を頼んでも1,500円くらいで済むのだから、居酒屋でせんべろセットを頼んでプラス一品頼むくらいの値段だ。でも分量を考えればほとんどのせんべろセットよりたぶんお得だろう。たとえば500mLのデカンタに辛味チキン、ポップコーンシュリンプ、アロスティチーニで1,400円。500mLのデカンタと言えばワイン2/3本分、グラスにすれば4杯くらいはある。そんでもって前菜はそれぞれフルサイズなので、せんべろセットについてくる盛り合わせに比べれば量もあるだろう。サイゼリヤはやはり、コスパがすごい。

 平日、そうやってだらだらと過ごしているとあることに気づいた。夕方5時半ごろといえば早めの夕食をとってもおかしくない時間帯なのに、やってくるお客さんが自分のような一名客ばかりなのだ。人の注文をじろじろ見るのも不躾だからやらないが、聞こえてくる範囲だと、大抵みんながっつり食事というよりも、自分と同じようにお酒と何か簡単な前菜を頼んでいる。みんな考えることは同じことかと、何となく面白い感じがした。客層はこの時間だとどうしても女性が多いのだが、それにしても若い人も結構多い。小さな子供のころは全く意識していなかったが、昔からサイゼリヤはこういうところだったのだろうか。

 中にはなかなかの猛者もいて、グラスワイン一杯だけ頼んで帰っていく人もいた。これから決闘でもあるのかなとほろ酔い気分で考えながら、そういえばたまにではあるけど、人と会うのは緊張するからという理由でアルコールを入れる人もいるなあと思ったり。一人飲みは会話も何もない分、ふらふらといろんなことを連想ゲームみたいに考えるのが楽しかったりする。

 そういえば冬メニューに変わって、サラミと生ハムがメニューから退場してしまった。ワインに合わせる前菜と言えば王道だったのでかなりショックだった。円安などの影響だろうが、早く戻ってきてくれると嬉しい。あと、いつの間にか食後酒のグラッパもいなくなっている。昔イタリア料理を食べに行ったときに最後POLIを頼んで、「イタリアでは最後にこういうのを飲んですっきりする」という話を聞いていたものだから、グラッパがないのもなんだか寂しい。いつかまたしれっと帰ってきてくれることを祈ろう。