個室にて

Ars Cruenta

卵でとじる

 おなかがすいたけど面倒な料理はしたくないとなったとき、よくどんぶりを作る。しらすがあればしらす丼を作ればいいのだが、しらすが家にいつでもあるわけでもない。牛丼やビビンバもおいしいが、いざ作るとなると結構手間がかかる。そういうとき、すぐできてうまいのが「卵でとじる」丼シリーズだ。

 卵でとじるというとかつ丼や親子丼が思いつくが、とじるものは実は何でもよい。油揚げをとじれば「衣笠丼」、かまぼこや天ぷらをとじれば「木の葉丼」など比較的マイナーな名前の付いたものになるが、乾燥湯葉を鍋でもどしてとじたってうまいだろう。ちなみに今日は、ちくわを薄切りにしてとじた。

 この丼のいいところは、味付けも全部固定で手軽という点だろう。任意の出汁5~6にみりん1、しょうゆ1だけで味が決まる。だしを取るのが面倒なら、水に顆粒出汁でもおいしくできる。5:1:1だと少し濃いが、6:1:1のものは即席の素麺つゆとしてもおいしく使える。

 卵とご飯と言えばオムライスも大好きなのだが、オムライスは卵でとじる丼とは比較にならないほど手間がかかる。まず下のご飯をケチャップライスやコンソメライスにしなくてはならないし(やはり炊飯器で作るよりきちんと炒めないとおいしくない)、上にかけるソースも考えないといけない。ケチャップが一番簡単だろうが、デミグラスやクリームソースが食べたくなってしまう。そうなってくると、最初から丁寧に作ればいいものだが、ついついシチューをした翌日くらいにしか作らなくなってしまう。

 ちなみに、卵でご飯を綺麗にくるもうなんて考えは料理を始めた時から捨ててしまった。ライスの上に半熟に焼いた丸い卵をそのままかけたっておいしいし、十分に「映える」と思うのだが、オムライスを作る人の中には熱狂的な「巻きたい人」がいるらしい。