個室にて

Ars Cruenta

危険なマゾゲー

 子供のころプレイしたゲームで何が印象的でしたか? よくこういう質問で、FFやドラクエの名前が挙がる。きっともう少ししたら、ますます私の知らないゲームの名前がいろいろ挙がるのだろう。質問者がどういうことを聞きたくてこの質問をするのかにもよるが、もしかしたら私なら「スーパーモンキーボール2」と答えるかもしれない。

 世の中には、プレイヤーに過度な身体的・精神的ダメージを強い、攻略するのに恐ろしく手間も時間もかかる「マゾゲー」と呼ばれる一群のゲームがある。もちろん人によって何がこのジャンルに入るのかは異なるかもしれないが、思うにスーパーモンキーボール2は子供にトラウマを植え付けかねない、恐ろしいマゾゲーだったのではないかと思うのだ。

 なぜ恐ろしいかというと、このゲームはふたつの要因でこれがマゾゲーであることを隠匿しているからである。まず第一にこのゲームは明らかに低年齢層向けを意識しているように見える。主人公のサルたちはポップで可愛らしく、物語も「悪い博士に盗まれたバナナを取り戻しに行く」という単純極まりないものだ。作中に登場するダンスなどは、「おかあさんといっしょ」などの歌謡を思わせる、小さな子供でも理解しやすいものとなっている。第二に、このゲームのルールは一見して極めてシンプル。おさるの入ったボールをスティックで操作してゴールに入れるだけ。ここまで単純だと、後先考えずにいろいろのステージを見て面白そうと思ってしまうだろう。私はコロコロコミックに掲載されていた「スーパーモンキーボール」(前作)の記事を見て、もともと迷路やこの手のボール運びのゲームが好きだったこともあり、クリスマスに「2」を買ってもらったのだと思う。

 当初は知る由もなかったが、このゲームのメインゲーム(ストーリーモード)は1面10ステージが10面、計100ステージの構成。確かに最初のステージ(1-1) はおままごとより簡単、直進するだけ。だいたいの人は2面くらいまでは楽しく何の問題もなくプレイできる。3面あたりから雲行きが怪しくなり、何度もプレイしないと攻略できないステージが増えていく。そして当時一緒にプレイしていた人たちの話を聞く限り、小学生たちは4面「きょだいくじらのおなか」で絶望する。たとえば、ステージ下部からボールを仕掛けで突き上げて、灯台のような突起物の上にわたってゴールしないといけないなど、そもそも最初は何をどうすりゃいいのか分からないステージが増えていくのだ。6面「ぐつぐつおなべ」では、56個のスイッチのうち3個ある当たりのどれかを引かないとゴールできないなんていう「スイッチインフェルノ」なんてステージまで登場する。最初どうやって攻略するかを知ったときは馬鹿じゃないかと思った。もちろん奇を衒っているだけではなくどんどん求められる操作能力も上がっていき、制限時間内に間に合わないステージも増えていく。これがたとえば「10ステージ中8ステージ攻略で次に行ける」とかならよかったのだが、当時は全ステージをクリアしないと次に行けない仕様で、どう攻略するのかもわからないステージを最後はヤケになって攻略していた気がする。

 記憶する限り、8面までしか攻略できず、結局9・10面は見ることができなかった。実は現在、Steamで、1・2・次作をすべてプレイできるお買い得なパックが売られているのだが、私のパソコンではどうも感度の問題で難儀しそうだったのであきらめている。この移植版ではキャラクターが現代風になっているほか、どうも一部のステージの難易度が引き下げられたり、「攻略したことにする」機能なんかもあるようで、マゾゲー度は下がっているようだ。一度お試しあれ。