個室にて

Ars Cruenta

ドラッグストアとコロナ

 生活するあらゆる人々にまで影響を与えるような形でコロナ禍が始まって、もうすぐ二年が過ぎようとしている。二年近い自粛ムードのためか、このたびのオミクロン株の流行では「もはやコロナは風邪だ」という言説が再び隆盛を極め、私の住む町では、普段からきちんとしている人ほどふたたび縮こまってしまい、チンピラくずれのような連中ほど、あごマスクにノーマスクで大声で談笑という、なんとも哀しい現象が起こっている印象がある。そんななか気になるのが、医療機関がひっ迫するなか、街のドラッグストアはどれくらいの感染者が出ているのだろうかということである。

 というのも、もしこうした人たちが「コロナはただの風邪だ」と思っているとすれば、風邪での外来対応が難しくなった以上、そして「コロナにかかっているとバレるとまずい」という感情が出てくる以上、彼らは症状を感じる限り当然街のドラッグストアに風邪薬を買いに来るだろうからだ。そしてオミクロンが数の暴力によって医療機関を疲弊させているとすれば、その数の暴力は今度、自覚症状のある人たちが来る街のドラッグストアに訪れるはずである。思えばコロナ禍が始まった当初、コンビニが休業する光景を見て衝撃を受けた覚えがある。あのようなことがドラッグストアにいつ起きてもおかしくないし実際にコロナが起こったときは閉めたお店の話も聞いたのに、管見の限りオミクロンではそのような事例は聞いたことがないのである。

 もっとも「店舗」といっても、個人事業主でもない限り、周りのお店から一時的に人員を補充することはできるのかもしれない。しかし一つの地区で一人二人がコロナに感染したくらいなら何とか回せるかもしれないが、アルバイトを含めクラスターのように何人も感染者が出ているようなら、店を運営するのは難しくなってしまうだろう。その辺のドラッグストアを見ていても、感染対策は別にスーパーと大して変わりがないような気がする。そういえばスーパーも閉めていない。これはどういうことなのだろう。昔、「ドラッグストアの店員は風邪やら細菌による胃腸炎やらを抱えたいろんな客からいろんなものを持ち込まれるから抵抗力が強い」なんて眉唾話を聞いたことがあったが、あれは決して嘘ではなかったのだろうか。それとも、やはり基本をある程度徹底することで、職場での感染は抑えられるということなのだろうか。